こんにちは!
NBA好きブロガーのおしょうサンドです。
世界最高峰の男子バスケットボールリーグ「NBA」。
世界中の超人が集うこのリーグでは選手一人一人に支払われるサラリー(給与)の金額も世界最高峰です。
そんなNBAにおいて、選手の「契約」のルールを司っているのが「団体交渉協約(CBA)」。
NBAとNBAの選手組合が結ぶ、労働条件、賃金、福利厚生、労使関係などに関する協定のことですね。
CBAは毎年少しずつ改訂が行われていますが、2024-25シーズンに大きな改訂があったのをご存知でしょうか?
その1つが「ファーストエプロン(First Apron)」と「セカンドエプロン(Second Apron)」の導入です。
これらのルールは、チームに給与総額の上限とそれを超えた際の制約を提示し、リーグ全体の力のバランスを保つことを目的としています。
ただ、この言葉だけではどのような内容なのか全く分かりませんよね。
そこで、この記事では「ファーストエプロン」と「セカンドエプロン」について概要と制約の具体的な内容について分かりやすく解説していこうと思いますよ!
それでは早速、ティップオフ!!
【一言解説】NBAの「ファーストエプロン」、「セカンドエプロン」とは?
2023-24シーズンから新たに導入された制度の1つである「ファーストエプロン」と「セカンドエプロン」。
一言で言うと、どちらも「サラリーキャップ」と呼ばれるチーム全体での給与総額の制限を大きく超えたチームに対して課される”お金で解決できない”ペナルティ(制約)のことです。
NBAの運営側がリーグ内の勢力が均等になるよう作った制度だそうで、これまでも「ラグジュアリータックス」と呼ばれる違反金制度はあったものの、結局お金のあるチームが強くなるという流れに痺れを切らした形なのでしょう。
ここではそんな「ファーストエプロン」と「セカンドエプロン」について詳しく説明していこうと思いますよ。
それぞれの概要や課されるペナルティーの詳細について知りたい方は必見です。
ファーストエプロンとは?
先述したように「ファーストエプロン」とは、サラリーキャップを大きく超えたチームに適応されるペナルティの1つです。
ではなぜ”ファースト”なのかというと、チーム給与の総額が増えていくと最初に超える制限ラインだから。
”エプロン”については調べてみましたが、あまり正確な語源を見つけることができませんでした。(詳しい方いたら教えてください!)
ファーストエプロンの金額は毎年NBA公式が設定しており、必ずしも同じ金額とは限りません。
2025年7月1日(日本時間)にNBA公式が発表した内容によると、2025-26シーズンのファーストエプロンの金額は1億9594万5000ドル(約282億1608万円)。
2025-26シーズンは、チームの給与総額がこの金額を超えるとペナルティーが課されるということですね。
ファーストエプロンのペナルティの内容は以下の通りです。
【ファーストエプロン ペナルティ内容】
- 「ノンタックスペイヤー・ミッドレベルエクセプション(MLE)」が使えなくなる
- 「バイア二ュアルエクセプション」が使えなくなる
- トレードで放出した選手よりも高い契約を結んでいた選手を受け取ることができなくなる
- 「ノンタックスペイヤー・ミッドレベルエクセプション(MLE)」以上の契約を結んでいた選手とシーズン中のバイアウトマーケットでの契約ができない
- 「サイン&トレード」で選手を獲得できない
1つずつ簡単に解説していきますね!
ペナルティー①「ノンタックスペイヤー・ミッドレベルエクセプション(MLE)」が使えなくなる
チームの給与総額がサラリーキャップを超えていつつも、ファーストエプロンを下回っている場合に使用できる例外的な契約の権利「ノンタックスペイヤー・ミッドレベルエクセプション(MLE)」。
各チームが毎年1度のみ使用できる権利であり、この契約方法で結んだ契約の金額はチーム総額の計算に含まれません。
ファーストエプロンを超えたチームはこの権利を使うことができなくなります。
その代わりに「タックスペイヤー・ミッドレベルエクセプション」の使用が可能になりますよ。
ただ、「ノンタックスペイヤー・ミッドレベルエクセプション(MLE)」に比べると金額も契約年数も少なくなってしまうため、”ロールプレイヤー”と呼ばれる部分的な役割でチームを支える選手たちの獲得において不利になってしまうというわけです。
●ノンタックスペイヤーMLE
年俸:1410万4000ドル(約20億3097万6000円)
最長4年
●タックスペイヤーMLE
年俸:568万5000ドル(約8億1864万円)
最長3年
※金額は2025-26シーズンのものです。
ペナルティー②「バイア二ュアルエクセプション」が使えなくなる
「バイア二ュアルエクセプション」もまたチームの給与総額がサラリーキャップを超えていつつも、ファーストエプロンを下回っている場合に使用できる例外的な契約の権利の1つです。
使用できるのは2年に1回で、この契約方法で結んだ契約の金額はチーム総額の計算に含まれません。
ファーストエプロンを超えたチームはこの権利も使うことができなくなります。
●バイア二ュアルエクセプション
年俸:513万5000ドル(約7億5716万円)
2年契約
※金額は2025-26シーズンのものです。
ペナルティー③トレードにおける「サラリー合わせ」の条件の厳格化
NBAのトレードにはトレードで獲得する選手のサラリー(給与)と放出する選手のサラリーが概ね一致していなければならないというルールがあります。
具体的には放出する選手のサラリーの125%に25万ドルを足した金額までの選手を獲得することができるとのこと。
このため、各チームはスーパースターを獲得するために自チームの複数の選手のをまとめて放出するという手段を使います。
しかし、ファーストエプロンを超えているチームはこの条件がより厳しくなるんです。
具体的には放出する選手のサラリーの110%までの金額の選手しか獲得することができなくなってしまうんですね。
つまり、同じ金額のスーパースターを獲得するためにより多くの選手を放出する必要があるということであり、強いチーム作りがより難しくなるわけです。
ペナルティー④「ノンタックスペイヤー・ミッドレベルエクセプション(MLE)」以上の契約を結んでいた選手とシーズン中のバイアウトマーケットでの契約ができない
NBAでは「トレードデッドライン」というチームの編成を変更することができる期限が定められています。
逆に言えば、それまではシーズン中であっても選手の入れ替えが可能だということ。
このため”シーズンの途中にチームから放出された選手がどのチームに行くのか”は、NBAファンの間では毎年大きな話題になっていますよ!
ただ、ファーストエプロンを超えたチームはこのバイアウトマーケットでの契約において、先述した「ノンタックスペイヤー・ミッドレベルエクセプション(MLE)」以上の金額をもらっていた選手との契約を結ぶことができません。
これにより、スーパースターはもちろん、他の有望な選手の獲得にも不利な状況となってしまうというわけですね。
ペナルティー⑤「サイン&トレード」で選手を獲得できない
ファーストエプロンを超えたチームは「サイン&トレード」と呼ばれる契約方法で選手を獲得することができません。
サイン&トレードとは、”制限なしフリーエージェント”と呼ばれる状況の選手が、それまで所属していたチームと契約を締結した後にその選手の希望する他のチームへトレードされることを言います。
これは選手、チームの両方においてメリットのある契約方法。
詳しくは割愛しますが、選手にとってはより大きな契約をもらうことができ、チームにとってはトレードにより何かしらの対価を受け取ることができるというわけです。
ファーストエプロンを超えたチームはこの「サイン&トレード」を使うことができないので、チームの補強が難しくなるというわけですね。
セカンドエプロンとは?
続いて、サラリーキャップを超えたチームに適応されるペナルティの2つ目「セカンドエプロン」について解説していきます。
「セカンドエプロン」は「ファーストエプロン」を超え、さらに高額なサラリーを支払っているチームを抑制するために用意された第2の制限ラインのこと。
セカンドエプロンは基本的に超えてはいけないというのが各チーム運営陣の共通認識であり、ファーストエプロンよりも遥かに厳しいペナルティが課されることとなっています。
ファーストエプロンと同様に、セカンドエプロンも毎年金額が変動します。
NBA公式によって発表された2025-26シーズンのセカンドエプロンは2億782万4000ドル(約299億2665万6000円)とのこと。
そして、この金額を超えてしまったチームには以下のようなペナルティが課されます。
【セカンドエプロン ペナルティ内容】
- ミッドレベルエクセプションの使用禁止
- 複数の選手の契約を合算してトレードすることを禁止
- トレードの際のサラリー調整のための金銭の利用禁止
- 7年先の1巡目指名権のトレード禁止
- 翌年の1巡目指名権が強制的に30位になる
1つずつ簡単に解説していきますね!
ペナルティー①ミッドレベルエクセプションの使用禁止
ファーストエプロンの方でも解説した例外的な契約の1つである「ミッドレベルエクセプション」。
高額なサラリーを支払うチームがペナルティを避けつつ選手と契約することができる数少ない手段ですが、セカンドエプロンを超えたチームはこの契約方法の使用が禁止されます。
これにより、ミニマム契約というNBAにおける最低保証の契約かドラフト以外での選手の獲得が難しくなるというわけですね。
ペナルティー②複数の選手の契約を合算してトレードすることを禁止
NBAのトレードは放出する選手の契約総額と受け取る選手の契約総額が概ね一致していなければならないという制限があります。
このため、1人のスーパースターを獲得するために複数の選手をまとめてトレード先に放出するというのは非常によくあるケースです。
しかし、セカンドエプロンを超えてしまったチームはこの形式のトレードが完全に禁止となってしまいます。
完全に1対1のトレードしかできないということですね。
つまり、強力な選手を獲得するためには自チームの同じくらい強力な選手を放出しなければならず、チームの補強が難しくなるというわけです。
ペナルティー③トレードの際のサラリー調整のための金銭の利用禁止
NBAのトレードではトレード内容に現金を含めることが認められています。
ただし現金の金額はトレードの際のサラリー合算には含めることができず、基本的にはやや不利なチームがトレードを成立させるために支払う形式上の対価という側面が強いです。
ただ、セカンドエプロンを超えたチームはこの現金の使用も禁止されます。
これにより、トレード内容の柔軟性がかなり制限されてしまい、トレードの際の交渉が難しくなると考えられます。
ペナルティー④7年先の1巡目指名権のトレード禁止
NBAのトレードにおいて「ドラフト指名権」もまた重要な交渉手段の1つです。
特にドラフトで30位以内の選手を指名することができる「1巡目指名権」はチームの補強において重要な役割を持ち、トレードを成立させるための大きな手札として使用されるケースも珍しくありません。
しかし、セカンドエプロンを超えたチームは7年先のドラフト1巡目指名権のトレードが禁止されてしまいます。
これにより、遠い将来のドラフト指名権を放出し、即戦力を獲得するという動きができなくなるというわけです。
ペナルティー⑤翌年の1巡目指名権が強制的に30位になる(複数年超過した場合)
チームを補強するうえで、将来有望な若手選手を獲得することができる「NBAドラフト」は非常に重要なイベントです。
特に上位で指名をされる選手たちは即戦力となるケースも多く、未来の主力選手を獲得する可能性のある「1巡目指名権」はどのチームも喉から手が出るほど欲しいもの。
しかし、セカンドエプロンを超えたチームはそんな「1巡目指名権」が強制的に30位(最下位)に設定されてしまいます。
ただ、これは非常に重いペナルティですので1度超過しただけでは発動せず、3年間のうち2年、または5年間のうち3年超過した年があるチームに課されるペナルティです。
サラリーキャップを超過するとどうなる?課される制約の詳細まとめ
先述したように、この記事で解説している「ファーストエプロン」や「セカンドエプロン」はサラリーの制約を超えたチームに課されるペナルティ(制約)のことです。
ただ、「ファーストエプロン」を超えていなくともタックスレベルを超えたチームには金額ごとに細かなペナルティが決まっているのをご存じでしょうか?
ここでは、そんな細かなペナルティを一覧表にしてまとめていこうと思います。
タックスレベル超過額 | ペナルティ(制約) |
$0〜$5M | ラグジュアリータックス (超過額$1につき$1.50) |
$5M〜$10M | ラグジュアリータックス (超過額$1につき$1.75) ファーストエプロン ($8.05M〜) |
$10M〜$15M | ラグジュアリータックス (超過額$1につき$2.50) ファーストエプロン ($8.05M〜) |
$15M〜$20M | ラグジュアリータックス (超過額$1につき$3.25) ファーストエプロン ($8.05M〜$19.93M) セカンドエプロン ($19.93M〜) |
$20M〜 | ラグジュアリータックス (超過額$1につき$3.75) セカンドエプロン ($19.93M〜) |
【用語の詳細】
サラリーキャップ:チームが選手に支払う年俸の総額に上限を設ける制度。
ラグジュアリータックス:チームの給与総額がタックスレベルを超えた際に生じる罰金。
タックスレベル:ラグジュアリータックスを支払う必要があるチームサラリーの制約ライン。
【2025-26シーズンの金額】
サラリーキャップ | $1億5464万7000 |
タックスレベル | $1億8789万5000 |
ファーストエプロン | $1億9594万5000 |
セカンドエプロン | $2億782万4000 |
参照:NBA.com
さいごに
今回は「ファーストエプロン」と「セカンドエプロン」について解説してきました。
いかがでしたでしょうか?
「ファーストエプロン」や「セカンドエプロン」とは、チームに給与総額の上限とそれを超えた際の制約を提示し、リーグ全体の力のバランスを保つために設けられたルールです。
ファーストエプロンでは例外契約の禁止やトレードの制限などを、セカンドエプロンではさらに厳しいトレード制限やドラフト1巡目指名権の縛りなどが課されてしまいます。
これらのルールにより過度な支出はチームへのデメリットとなり、豊富な金銭を持つチームが有利になるという事態を防いでいるということですね!
この記事を読んで、「ファーストエプロン」や「セカンドエプロン」についてかなり詳しく知ることができたのではないでしょうか?
NBAの契約には理解の難しい用語が数多くあります。
当サイトではそれらの用語について多くの方が理解できるように解説していきますので、正しく理解し、よりNBAを楽しんでいただけたら嬉しく思います!
それではまた、次の記事でお会いしましょう!